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祈願成就

満ち足りて
眠りたい
できれば
大切な命全部

温めて
守りたい
できれば
巡り巡って何度も

その笑顔と
あの大きな黒い瞳

いつまでも
見ていたい
願わくば
この世界の終りまで


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愛は、すべてここにある

静かに寝息をたててる
赤い犬のぬいぐるみを抱いて
瞼をきゅっと閉じて
しあわせな夢をみててくれてるだろうか
もうあまり自由には動かなくなった身体で
せめて夢の中では
ゴム毬みたいに駈けまわれてるだろうか

明日は
久し振りの公園へ朝から出かけよう
木漏れ日の下を
ゆっくり ゆっくり 三人で歩こう


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九月の雨の窓辺

寝ている隙を見計らって
パソコンを立ち上げてみても

最近は
睡眠が短くて浅いから
気になって覗きに行くと
やっぱり
大きな黒い眼をぱっちりと開けて

でも自分では起き上がれないから
気付かれるのをただじっと待って

以前なら
トコトコと傍まで来て
なにしてるの? って首を傾げたり
拗ねたり
あの手この手で妨害が出来たのに

もう起き上がれないから
ただじっと待ってる

何処か遠くを見て
近づく足音に
耳だけを動かして

九月の雨の窓辺で
その黒い瞳で
何かを思い出してる


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間に合うように

この台風が過ぎたら
レジャーシートを使おう

風で捲れないように
何かおもりを考えて

色んな事が
間に合うように

夜もちゃんと眠って
朝は早く起きよう

季節外れのアロハで
記念の写真も撮ろう

色んな事が
間に合うように

間に合うように


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黄金

君が怖がるから
この時間には
部屋の明かりを点けて

ガラス窓には仕方なく
カーテンを曳いた
落日を惜しみながら

いま
窓の外には
黄金色した冬の夕空

だけど
君と見れないなら
どんな景色も意味がないんだ

聞こえてる?
僕はこんな空よりも
君の真黒な瞳が見たい

長い長い
お昼寝の続きみたいに
窓辺で寝そべった

いま
君を包む黄金

聞こえてる?
少しの責める言葉よりも
幾千のありがとうが

聞こえてる?
声にならない嗚咽よりも
幾億の愛してるが

いま
君が溶けていく黄金

ねえ
君を忘れない


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2012.12.13

手編みのケープを
ちょこんと羽織って

金色の日差しに
眩しげに目を瞑って

さよならはしない
もうその眼は僕を映さないけれど

小さな白い歯と
冷たい赤い舌

透明の衣装ケースを満たす
ドライアイスの冷気

さよならはしない
それが永久の眠りだとしても

僕は身勝手なんだ
わがままな君よりもずっと

僕は弱虫なんだ
甘えん坊な君よりもずっと

僕の手のひらに残る
最後の最後の呼吸

すべてを赦して
最後の最後の視線

さよならはしない
痩せたぼろぼろな骸の

君を灰に還すけれど

さよならはしない
いつまでも愛してるしか言わない

さよならはしない
いつまでも愛してるしか言わない


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空を昇れ

すぐ傍でこんなにも
大人気なく泣いているのに

知らん顔で眠る
君はあした
少しの骨になる

手編みのケープを羽織って
好きなお菓子と色とりどりの花

僕とたたかったおもちゃも
出来れば連れて
高い空を昇れ

手紙と写真も
この次、迷わないように

穏やかに眠る
君はあした
少しの骨になる

また逢うために
いま眠ってるんだろう?

天気予報は晴れ
君の好きな
日差しと風のなか

僕と彼女の愛を
からだいっぱいに纏って
高く空を昇れ


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The Rainbow Bridge

たぶん
そんな処にはいない
君は僕たちが好きだから

いまも
お気に入りの窓辺とか
陽だまりのベランダとか
僕の膝だとか
とにかくすぐ近くで

どこへでも
行ける自由を放棄して
お喋りな瞳で
丸く白い身体で
僕の足元をついて回るんだ

だから
そんな処にはいない
君は僕たちが大好きだから

いまも
僕のチーズをねだったり
彼女のアイスを狙ったり
寝癖のついた
左目をしばたたかせて

ちりちりと
可愛い尻尾を振って
いたずらな瞳を
きらきらに輝かせて
僕の後を追って走るんだ

その橋で会う
いつかまでなんて待たせられない
君はとても淋しがり屋だから

この場所で
きっと君を捜す
あの時使えなかった奇蹟で

きっと君を捜す
きっとまた抱きしめる
君は僕たちが好きだったから

きっと君を捜す
きっとまた抱きしめる
僕たちは君が大好きだから


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What A Wonderful Small World

君がくれたこの機会に
何かと枷をはめる癖を
止めることにする

それから
くだらない拘りなんかも、徐々にね

聞えているかい?
ベイビー
君と過ごした日々が
確かに僕を変えた

また逢えるかい?
ベイビー
その願いだけで
この2013年を泳ぎきる

まずは二人になった舟を
懐かしい未来へと漕ぎ出す
羅針盤は君

もう一度
What A Wonderful Small World

聞えているかい?
ベイビー
君と過ごした時間が
あの短い日々が

僕らには
僕ら自身より
大切だったんだ

ねえ、
ベイビー
ここに戻っておいで
君のままそのまま

ねえ
ここに戻っておいでよ

ベイビー
馬鹿の一つ覚えみたいに
そればかり思うよ

馬鹿の一つ覚えみたいに
ベイビー
そればかり思うよ


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常 -とことわ-

ケンタッキーはあげられないから
ウォルターでケーキを買おうかな、とか

お蕎麦だけじゃ物足りないだろうけど
もうエビは呑み込めないしな、とか

でも彼女のお雑煮と美味しいハムは
なんとか食べさせてあげたいな、とか

おそらくそんな日は来ないと
判りつつ 言い聞かせつつ

覚悟は出来てた心算なのに
無意識に 未来ばかりを思って

君はきっと喜ぶぞ って
君をきっと喜ばせるぞ って

おそらくそんなに時間は無いと
判りつつ 言い聞かせつつ

十分過ぎるほど頑張った躯を
撫でながら まだ一緒にいたくて

一心に見つめてくる瞳を
いつまでも 見つめ返していたくて

ただ 一緒にいたくて
ただただ 君がかわいくて

すべてが終わって過ぎ去ったいまも
部屋を出るときに振り返る癖が、残る

真黒い大きな瞳を
いつまでも 見つめ返して

ただ 一緒にいたくて
ただただ 君がかわいくて


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